熱中症に解熱剤はなぜ効かない??インフルと熱中症での体温の上がり方の違い【熱中症vol.2】

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熱中症に解熱剤は無効!

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前の記事では、そもそも熱中症とは何ぞや〜?という説明を少し書かせていただきました。
  

 

g2d.hatenablog.com

 

その際、熱中症には解熱剤が効きません!ということを書いたのですが、これはなぜなのか?ということを、インフルエンザの発熱と熱中症の体温上昇を比較しながら少し書いていきたいと思います!
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インフルと熱中症の40度は何が違う?

では、まず、インフルエンザではなぜ発熱するのかということを順番に見ていきましょう。
 

・発熱(fever)

インフルエンザによる体温上昇は、いわゆる「発熱(fever)」になります。
 
発熱では、感染や炎症によりPGE2(プロスタグランジンE2)という化学物質が体内で作られて増えてくることから始まります。
(ちなみにですが、有名な解熱鎮痛剤にアスピリンがありますが、アスピリンはこのPGE2を阻害することで炎症を抑えるお薬です)*1
 

 

体温というのは、脳の視床下部という部分にある、「体温中枢」(ちゅうすうと読みます)という部位によってコントロールされています。ここが正常に働くことにより、私たちの体が正常な体温に維持されています。というより、維持するために、様々な体の反応を起こします。寒いとき自然に震えてしまうのもこの体温中枢がしっかり働いているおかげです。
 
さて、先程書いたPGE2ですが、この子が体温中枢に働きかけると、体温中枢が、正常な体温がより高いところに再設定されてしまいます(これをセットポイントの上昇といいます)。イメージとしては、普段は体温中枢が「正常な体温は36度くらい!」って思ってるところ、PGE2にそそのかされて、「正常な体温、やっぱり38度くらいやったわぁ!」って思いこまされちゃうんですよね。
 
これによって、生体は体温を上げようとするわけです(発熱反応)
例えば、まず、体の代謝があがります(代謝亢進)。その他にも、体の表面で血液の熱が失われるのを防ぐために、皮膚への血流が少なくなります(皮膚血流低下)。さらに、寒さを感じて体を震えさせることで熱を生み出そうとします(震え熱産生)。
 

 ・高体温(hyperthermia)

では、次に熱中症における体温の上昇がなぜ起きるのかを考えていきましょう。
 
これは意外と単純で、熱中症が起きる場面をイメージしてもらえばいいのですが、周りが熱い際に熱中症になりますよね。これが直接体に作用しているわけです。つまり、外の暑さから熱を受けて体温が上がるわけです。
この時、脳視床下部の体温中枢には、何も働きかけていないので、36度くらいが正常な体温だと認識しています(セットポイントは正常)
 
そうなると、生体は体温を下げようとする(放熱反応)わけです。
例えばですが、汗をかいて、その汗が蒸発する際に熱を奪っていってもらうことにより体温を下げようとする方法や、体の表面に熱い血液を多くして、外気で冷却しようとします(皮膚血流の増加)。
なので、熱中症ではずっと「暑い」と感じていますし、もちろん震えも起こりません。
 
 

解熱剤はどこに効く?

それでは、解熱剤がなぜ熱中症に効かないか、考えていきましょう!
 
今まで体温中枢やらなんやらと難しいことを書いてきましたが、これが解熱剤について考える際には非常に重要になります。
 
解熱剤は、簡単に言えば、体温中枢セットポイントを下げることで体温を下げます
 
発熱の例で考えますね。
発熱しているタイミングでは、「体温は普通38度やで〜」って体温中枢さんが思っているわけです。
そこに、解熱剤さんがやってくると、
「ちゃうちゃう、もっと正常な体温は低いんやで!!」
って体温中枢さんを調整してくれます。
そこで、体温中枢さんは気づいて、自分の中で正常体温を下げるわけなんですね。なので、体温を上げようとする反応が収まっていき、体温が徐々に下がってきます。
 
もうおわかりでしょうか。
熱中症では、体温中枢さんはなんにも勘違いなんかしてません
 
なので、解熱剤さんが「設定体温たかいで!」って言ったところで、そもそも体温をあげようという反応は体に起きていないので、熱は全然下がらないわけです。
これが熱中症に対して解熱剤が無効な理由です。
 

まとめ

少し難しかったかもしれません!お疲れさまでした!
まとめると、
  • インフルエンザなどの発熱では、体温中枢の設定温度があがっているため、体温が上がっている。
  • 熱中症では、体温中枢の設定温度は正常。
  • 解熱剤は、体温中枢に働きかけることで、体温を下げる
すなわち、体温中枢が正常である熱中症に解熱剤は効果なし
 
ということです。
 
次回は、
「熱中症ではいつ救急車を呼ぶべきか?」
について、熱中症の診断や病態について説明しながら書いていこうと思います![1]すみません、〇えピタについてはさらに次の記事にて解説します( ;∀;)
 

https://www.travel-rescue-tips.com/heatstroke3/

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1 すみません、〇えピタについてはさらに次の記事にて解説します( ;∀;

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