疲れた僕は、世界の終わりへと旅立った

エッセイ
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ゴールデンウィークとはその名の通り「ゴールデン」であるべきである。
きらびやかで輝かしい、きらきらとした毎日を送るための祝日の連続であるべきである。

せっかくの長期休み、今までに色々なところに行った。
学会があった年もあったし、純粋に旅行に行ったり帰省をした年もあった。
新年度が始まって疲れ始めたタイミングで訪れるつかの間の休息、先人たちはいいタイミングで祝日を並べるようにしたのだな…と改めて思う。

でも、そんなきらきらとしたゴールデンウィーク、しかも学生生活最後のゴールデンウィークを、海外でもなく日本のどこかでもなく、「世界の終わり」で自分が過ごしていようものなど誰が想像しただろうか…。

この「世界の終わり」とはもちろん比喩表現であり…と言いたいところなのだが、厳密にそう言えるかと考えるとちょっと悩ましい。

なぜなら、私が今いるのは、文字通り「世界の終わり」だからだ。
ただ、物語の中での、という注釈はつくが。

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せっかくどこにも行けないのだが、とはいえちょっといろいろあって疲れてしまったのも事実。

だからと言ってごろ寝なんかしていたら、将来実際に働き始めたタイミングで絶対に体力が持たない…とか思ったりしたけれど、やはり体に今一つ力が入らない。

まあそういう日もあってもいいだろうーー
そう思って久しぶりに本に向かうことにした。

通常ならばある程度読みたい本を図書館などから仕入れてくることが多いが、平日のうちには図書館が空いている時間に図書館に辿り着けなかった。おまけに祝日はお休みときた。大打撃である。

そこで久しぶりに向かったのが自分の本棚。普段は勉強用の本ばかりで埋まっているが、その中にまだ手がついていない小説があった。
それが何を隠そう、この本だったわけだ。

意外とこのサイトでは村上春樹氏の本を紹介していることも多い気もするが、今回も例にもれず村上氏の作品である。

実を言えば、もともと私は村上春樹氏の作品を大学に入る前にあまり手に取ったことがなかった。いや、むしろ、あまり本というものを手に取らなかったといってもいいかもしれない。

そんな中、大学にいると意外と留学生と話す機会がある。
彼らの大半は日本が好きでやってきてくれていて(ありがたい限りだと今になって思う)、日本の文学作品に精通している人も多い。
となると、日本から外国語に翻訳されている作家として村上春樹氏の話題はそこそこあがったりするのである。

自分の国の作家について、海外から来た留学生のほうがよく知っている…

そんなことを憂いて、生協が文庫本の安売りをしているときにまとめて1万円ほどはたいて色々な本を買った。大学1年生の夏ごろの暑い日だった記憶がある。結構思い切ったことをしたなぁと当時は自分でも思ったけれども、それらの本は家族の中でも読みまわしたりしたし、十二分に価値を堪能したように思う(いつの間にか両親が古本に売りに出してしまっていた本もあって残念だったが…まぁ良しとしよう)。

別に村上春樹氏の作品ばかりを買ったわけではなかったが、そこで購入した村上春樹氏の本を何冊か読んだ。正直言って、初めは「よくわからない作品だなぁ」くらいにしか思わなかった。でも、何かに魅力を感じたのか、ことあるたびに大学図書館にある氏の本を借りては読んでみていた。不思議なもので、時を経て氏の作品に触れるごとに、徐々に面白みを見つけ出すことができている自分がいた。
ただ、氏の作品は読み通していくにあたり莫大なエネルギーがいる。続けて何冊も読めるものではない。そういう意味では、ちょうど忙しくなって読書からは慣れたりすることで上手にインターバルができていたのかもしれないとも思う。

そして、氏との作品に数年来の時を経て、かくして自らの本棚で作品と再会することになったわけであった。
大学1年生のあの日に買った本は、なんだかんだ言いながらほとんどすべて読破してしまった気でいたが、この作品だけはどうしてか自分の頭をスルーしてしまっていたようだった。

この本のストーリーもなんだかんだ言いながら不思議である。不気味でもある。初っ端の設定からいろんな意味で意味不明である。しかも、展開がすごく遅い。普段ならイライラしている気もするけど、疲れている身としてはそれくらいのストーリー展開のほうがついていきやすい。不思議なものである。

ただ、徐々に読み進めていくと色々なものが随所で結びついていくのがなんとも言えない面白さへとかわっていく。おそらくこの「なんとも言えない」という表現でしか言えない作品の特徴が、氏の特徴なのだろうなと改めて感じたりしながら読み進めていく。

氏の作品は、設定も意味不明だが、どこかでなぜか現実世界と結びつく描写がある。ファンタジーなのにも関わらずリアリティが若干漂うのはそういうところなのかもしれない。別の本で書いてあったことだが、村上春樹氏の作品はどうも社会情勢が不安定であるタイミングでよく売れるのだそうで、社会の変遷の中にある人の機微に触れるものがあるのかもしれないが、それはこのような社会の不安定性みたいな表現にもあるのかな、と思ったりすることがある。

今、この全く輝いていないゴールデンウィークを強制されている私たちも、まさしく社会の変動の中に生きているのではなかろうか?そんな私たちの中に、何かしら語り掛けるものがこれらのストーリーにはあるのかもしれない。

世界各地で、人がどんどんと倒れている。


ディストピアのような火葬のシーンがニュースで流れてきたりもしている。
日本でも行先のない救急車、ひたすら人工呼吸器に意識を抑制されながらつながれ続ける自分とそう年の変わらない人たちを見ていると「もしかして、これって何かのバイオテロドラマのワンシーンだったりするのでは?」と思ったりすることもある。残念ながら、これらは現実世界の事実である。ふと夢から覚める、みたいなこともあり得ない、紛れもない現実なのである。

現場の中にいる私たちでもファンタジーとリアリティの区別がつかなくなるくらいなのだから、その現場を知らない人たちにとってはなおさらなのだろうと思う。いくら誰がツイッターで発信しようと、それが現実だと思えない限りは実感はわかないものなのだろうと思う。ステイホームだのなんだのと言い続ける政府に嫌気がさしつつ、仕方のなく時間をつぶすために向かい合うネットコミックスと何ら違いのないエンターテインメントに過ぎないのかもしれない。

諦めるのは簡単だろうと思う。だけれど、そこで諦めてしまうと、本当に試合が終了してしまうことを、現場の医療従事者たちはよくわかっているのだろうと思う。だからこそ、隙間時間を縫いながら、自らの状況を、ネットの批判にさらされる覚悟で書き続けているのだと思う。

慰めてほしいわけでもなく、励ましてほしいわけでもなく。
ただ、この世界の今の現状が少しでもいいから改善の方向に向かってほしい。
いつの日か、ゴールデンに輝く日々が戻ることを願って…。

そう、雲の上はいつも晴れなのである。

医学部って、苦しいけど楽しい!

以上、マイルで旅する医学生「ちっぷ」(@aiueo_tips)がお送りしました!

まだまだ未熟だけど頑張るよ!

最後までお読みいただきありがとうございました!


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